アングル
角度を変えてタイからアジアを覗く

「まるで部活!」タイで初めての飲食業にチャレンジする髙木奈月さん

汗拭く暇なく、なりふり構わず働く私

中学校時代のバレーボール部での生活を思い出さずにはいられなかった。1階の厨房から3階の客席まで何度も往復するさまは、まるで階段を上り下りするダッシュのよう。注文を大きな声で何度も復唱し、シェフに伝えるのは、さながら監督からの伝令役か。

汗を拭く暇もなく、髪を振り乱し、なりふり構わず働く自分自身を見て、「まるで部活のよう!」と妙に感心しているのが、タイ・バンコクで坦々麺と麻婆豆腐のFC専門店「陳麻屋・TAKAKI」を夫の髙木三千生さんとともに切り盛りする妻、奈月さん。

今年1月末にタイの土を踏んだばかり。2月10日にソフトオープン、今月1日にグランドオープン。日本では飲食業未経験の二人。「見るのと実際にやるのとは大違い!」と勉強の毎日だが、ハイテンションな明るさは見ていて実に気持ちだ良い。

素直に「嬉しかった」

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フランチャイズ(FC)とはいえ、ここはタイ。全て日本と同じ食材や機材をそろえることはできない。ないものは現地で調達し、胡麻を煎り唐辛子を刻むことから始めなければならない。でも、それがかえって勉強になっている。

昨年秋、夫、三千生さんから脱サラとまさかのタイ行きを相談された時は、「ついにこの時が来たか!」と素直に嬉しかった。かねてから「飲食ビジネスで人を幸せにしたい!」と考えていた夫の夢を、一緒に叶えたいと思っていた。

だから、辛くても二人でやり抜こうと決意できた。仕事を辞めることに躊躇いもなかった。劇的な環境の変化だが、それが自分の大きな成長につながると確信していた。思い切って飛び出して、今では良かったと思っている。

1杯110バーツの生ビールのありがたさ

日本人が多く住むスクンビットのトンローに店はあるが、ちょっと奥まったソイ20の手前。「この場所でお客さんが来てくれるのだろうか」。不安はあったが、オープン3週間で4回も足を運んでくれた日本人客も。タイ人のリピーター客も増えた。

お客さんが来てくれることが、こんなに嬉しいことだとは思わなかった。1杯110バーツの生ビールのありがたさが、こんなにも大きなものとは思わなかった。お客様への感謝が、大切な原動力になっている。

タイ人スタッフとのコミュニケーションもどうにか取れるようになった。最初は身振り手振り。「どうして分かってくれないの」と言葉が強くなることもあった。でも、今はもう大丈夫。どうにか、やっていけそうな感じがしている。

次の目標は時間のやりくり

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昨年9月に夫から相談を受け、10月に視察。1月初めには当時の勤務先に辞表を出し、そのままタイへ。あとはオープンまで駆け足、全力疾走の毎日だった。人生で最もスピーディーな半年だったと言っていい。

着任した時、店舗の内装は終わっていたが、あちこちで水が漏れたり、停電したり。エアコンの修理を依頼しても、いつ工事が始まるのかさえ分からなかった。考えることがありすぎて、いつも頭の中がいっぱいだった。

少しだけ落ち着いた今、改めて思っていることがある。「私って、毎日毎日、住まいとお店の往復ばかり。エンポリ(百貨店)には1回、MBK(電気街)にも1回しか行ってない」。次の目標は時間のやりくり。「私も女の子。たまには、お洒落して、お買い物もしたいの…」

タイで在留届を提出済の日本人は最新の2012年統計で約5万人。企業などの駐在員や永住者、その家族などが多くを占め、滞在する男性の多くが仕事を持って暮らしている。女性についてはビザの関係から就労が難しいと一般的に理解されているが、実は「働く」女性は決して少なくない。新企画「タイで働く女性たち」では、タイで仕事やボランティア活動などに就き、活躍する女性たちを追う。

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