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真実のソンクラン 〜タイの一般家庭・インサイドレポート〜

4月13日〜15日の3日間、今年もタイ全土で派手に行われた通称「水かけ祭り」とも呼ばれるタイの旧正月・ソンクラン。老若男女問わず無差別に水をかけ合い、馬鹿騒ぎともとれるタイならではの新年の祭りだ。その期間中、ロッブリーのある一般家庭に潜入した。そこで目にしたものは、メディアを通して伝わってくるソンクランのイメージを大きく覆されるものだった――。

もちろん、ロッブリーの町でも一般に日本人がイメージするあの「ソンクラン」の水かけ合戦は繰り広げられていた。

だが、その裏で、タイの家庭ではどんなことが行われているかご存知だろうか? この家庭では家族や親しい友人たちなどが集まり、水かけ合戦に出陣する前に厳かな儀式が執り行われた。まずは、家中の仏像が強い光を浴びる一つの場所に集められる。

並べられた仏像たちに、一同揃って手を合わせる。

続いて、年長者から順番に仏像に水をかけていく。

最年少者が仏像に水をかけ終わると、今度は仏像の並べられた机の前に二つの椅子が置かれ、最年長の老夫婦がそこに腰掛ける。他の家族やその友人らはその前に跪いて座った。

老夫婦からそれぞれ、一年の幸せを願う言葉や今後についてのメッセージが一人ひとりに向けて送られる。ありがたい訓示を受けた家族たちは、その都度、手を合わせて頭を下げ、感謝の意を表していた。

それに対する感謝や尊敬の意が込められているのか、今度は家族たちが一人ずつ、先ほどは仏像にかけられた水を老夫婦にかけていく。

丁寧に清めるように足にも水がかけられ、老夫婦はもう一度、一人ひとりに優しく言葉をかけていく。「水かけ祭り」のもう一つの意味、いや、もしかしたら真の意味がここにあるのではないかと思わせる光景だった。

母親と娘による熱い抱擁も。この一枚を見るだけでも、あの「水かけ合戦」だけではソンクランは語れないことがわかるだろう。タイの家族にとって、タイ人にとって、決して欠かすことの出来ない特別な時間なのだろう。

一連の儀式が終わると、みんなで外へ出て、ピックアップ車に積まれた巨大なバケツに水を溜め始める。「どうしてソンクランでは水をかけあうんですか?」と問うと、返ってきた答えはいかにもタイ人らしいシンプルなものだった。「新年を祝って、みんなで楽しく遊ぶんだよ!」。こうして、この一家もあの戦場へと駆け出していった。

ソンクランを、陽気なタイ人たちのただの馬鹿騒ぎと思ってはいけない。「祈り」と「微笑み」の国に生きる人々が一年で最も大切にする3日間は、やはり「祈り」と「微笑み」のために捧げられる神聖な日々なのだ。

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Written by 本多辰成

本多辰成

バンコク在住ライター。タイサッカーやタイでプレーする日本人サッカー選手を中心に取材、執筆活動を展開。サッカー専門誌『サッカー小僧』(白夜書房)にて、タイサッカーコラム「微笑みの国にて。」を連載中。

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